2011.10.04 09:19 更新
水槽の中しか知らない2匹の金魚みたいに、幼い愛を育んでいた彼と彼女。黒猫の攻撃を防ぐ術も知りませんでした。
「私、幸せ! もうすぐ死んでしまうのに」。彼女=エンゼル(山出朋佳さん・上写真左)は祈りました、じきに息絶える自分のためではなく、生き長らえて旅立つ彼=サクライ(花牟礼宏紀さん・右)が無事に未来の夢をかなえられるように。
10月2日、鹿児島市中央公民館での2度のステージを満席で迎えた、鹿児島大学劇団テアトル火山団番外公演『君の忘れた水槽』には、うっかり忘れてしまいそうな日常の事柄がたくさん描きこまれていたように感じます。
たとえば、誰かのために祈るという行為もそのひとつ。
破れた恋から、まごころを回収するように、倉庫でホコリをかぶった水槽の残骸から指環を見つけ出し、ハルカ先輩(大久保彰子さん・左写真)に手渡そうとするサクライ。
画家志望のサクライにとり彫刻家になる夢をかなえるためパリに旅立つ上級生ハルカは憧れの女性。自分の知らない男性との間にできた指環の思い出さえも「大事にしてください」と告げるのです。
けれど、もう思い出すだけではないサクライです。ハルカの未来を祈り、幾夜も徹夜して描き上げた水彩を勇気を出して贈ります。
それは抽象画。小さな点と点の間を線がつないで浮かぶ絵...エンゼル・サクライ・ハルカが広い世界で連なります。水槽から見上げる星座にも似た夜の景色。
脚本・演出を担当した宮田晃志さんは昨年、鹿大劇団を卒部しました。これまでの鹿児島の劇団にない、ファンタジックで魂が宿った演劇を、次はどんな形で上演するのか期待されます。
今回は演出・舞台監督でサポートに徹した美貌の江口佳奈美さん、サクライの同級生アユカワを元気いっぱい演じた馬場千里さん(アクターズファクトリー鹿児島)、日本人離れした個性が光る"ポール"こと米山和弘さんの活躍も、また紹介できればと思います。
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なお、テアトル火山団現役生による第69回公演『散歩する侵略者』(脚本・前川知大、演出・福満みことさん)は12月24日・25日、鹿児島市中央公民館にて。