2009.12.30 14:31 更新
心づくしの年越しそば/池乃屋旅館(北海道・上川町)
九州から長野・新潟を回り、日本海岸を上って北海道へ――列車を乗り継ぎ、ようやく迎えた大晦日は北海道の最奥・上川町だった。景勝地・層雲峡や大雪山への観光拠点で、「上川ラーメン」の町としても有名だ。もっとも、駅に着いたのが22時過ぎ。翌朝は始発列車での出発だから、観光も次第もあったものではない。やむを得ない強行軍とはいえ、我ながら閉口する。
旭川から私を運んだ列車が、雪夜に消えてゆくのを見送って駅を出る。乾燥した内陸地なので、しんしん降りしきるのは完璧なパウダースノー。風に煽られて雪粒が地を吹き抜ける様は、さながら砂嵐である。一面の新雪をギシギシ踏みしめ、首をすくめながら宿へ急ぐ。あっという間に全身白まみれだが、粉雪なので濡れないのは幸いだった。
この年最後の宿は、上川駅前の「池乃屋旅館」だった。遅くの到着を詫びて部屋に通される。重いトランクを下ろしてコートを外すと、ようやく人心地がついた。もうすぐ新年だが、感傷にひたる暇はない。慌しく荷解きにかかり、翌朝の準備を急ぐ。
「年越しそばがあるけど、いかがですか?」――不意に、宿の女将さんが声をかけてくれた。今夜の客は私1人で、大晦日のサービスだという。ご好意に感謝して食堂に下りると、温かい天ぷらそばが湯気を立てていた。日付が変わったら初詣に行くという女将さんと語らいながら、年の暮れの一夜を楽しむ。こんなふれあいも旅の良さ、来年もよい旅が続きそうだ。
yu
(写真上)上川駅に着いた列車が回送されてゆく。外は一面の銀世界、冷え込みは一層厳しい
(写真下)大晦日の一夜をすごした「池乃屋旅館」。温かい年越しそばは本当に美味しかった